文科省は10年ほど前から、グローバルアントレプレナーつまり、新たなイノベーションを起こすベンチャー・起業家精神を持った人材の育成を進めようとしています。
しかし、アントレプレナーシップの世界的なトレンドを調査しているモニターレポートでは、起業に関する意識で日本は最下位。
日本人のリスクや失敗を強く恐れる国民性が大きく邪魔をしている、現状が明らかになっています。
そんな中でも、国内・海外を問わず、グローバルに活躍する日本人の学生や大人をインタビューしました!
シリーズでお伝えしていきます。
お一人目は、現在慶応義塾大学湘南キャンパスに通われている、高田さん(20)です。
(E→Edumom編集部、T→高田さん)
E:高田さんは、英語がかなりおできになるみたいですが、海外経験はおありなんですか?
T:高校1年生の時から3年間オーストラリアの高校に留学していました。
英語は最初とても苦手だったので、行った当初は苦労して身に着けましたね。
E:そうだったんですね!どうして、海外の高校に行くことになったんですか?
T:小学生から、兄の影響でサッカーをしていたのですが、高校1年生の時にサッカー留学でオーストラリアに行った時に、フットサルの監督にスカウトされて、そのままオーストラリアの高校に通うことになったんです。
でも、最初は現地の私立高校に通っていましたが、途中で公立の高校に転校したこともありました。
E:そうなんですか!それは大変そうですが、どうして転校することになったのですか?
T:最初に通った学校は、白人の生徒がほとんどで、友達はできたのですが、人種差別的な発言が多いなど、価値観が合わないと感じることが多く。
転校した公立の高校では、64の国と地域から来ている生徒がいて、とても多文化・多様な環境で、楽しく刺激的な毎日を過ごすことができました。
オーストラリアの高校では、大学に行くための勉強、というよりも、「自分がどうしたいのか?」「どう生きていきたいのか?」と問われることが多く、また興味を持ったことについてそれぞれが選択して突き詰められるような環境でした。
友達も、皆それぞれ興味を持ったことについて学んだり、自発的に活動したりしていたので、私自身も、「自分は社会のために何ができるんだろう?」と自然に考えるきっかけになりました。
E:そう言えば高田さんは、18歳の時に、ソーシャルビジネスに興味を持って、ビジネススクールで学ばれたご経験もあるようですが、どんな分野に興味があったんですか?
T:実は、私自身トランスジェンダー(自身の体の性に対して違和感を持つこと)でして、LGBTQのテーマについては、自分のいろいろな体験から、高い関心がありました。
特に、日本では、トランスジェンダーだった場合、プールや温泉に入ることもとてもハードルが高いことです。自分の身体について違和感やコンプレックスを感じている中で、それをあえて強調するような水着しか存在しないことで、私自身もこれまで困ってきました。
それで、トランスジェンダーを始めとする体に違和感を感じる人が快適に着用できる水着を開発できないかなと思い、今は構想を練っているところです。
E:そうなんですね!学業もありながら、ソーシャルビジネスや起業にも関心が高くていらっしゃるんですね。
T:そうですね。現在は、ソーシャルビジネスをしている企業のインターンとして働きながら、少しずつ自分のビジネスも進めていきたいと思っているところです。
E:素晴らしいですね!ちなみに高田さんがそうしたアントレプレナーシップを身に着けることができた理由って、何だったと思われますか?
T:そうですね、私の場合は、海外に行ったことも大きかったですが、実はその前から、自分の意見を言うのが好きだったり、困っている子がいると声をかけたり助けたくなったりする性格だったんです。
それに、自分自身がトランスジェンダーだったことで、人と違うことを嫌でも意識しましたし、もっとお互いの違いを尊重し合える社会だったらいいのに、と思った経験が、自分でも何かできることがないかな。と考えるきっかけになりましたね。
E:なるほど!それが高田さんの原体験になっているんですね。ちなみにご両親はどんな子育て方針でしたか?
T:そうですね。私の場合は両親共働きで、母もとても忙しい会社員でした。
なので、あまり生活や勉強についてうるさく言われたことは無く、基本的には好きなようにやらせてくれた、と言う感じでした。
でも、留学したいとなった時も、ソーシャルビジネスのスクールに入りたいと言った時も、母は反対せず応援してくれたので、とても感謝しています。
E:やりたいことを尊重して下さるお母さまだったんですね。
現在の大学生活はいかがですか?
T:そうですね、とても楽しいです。慶応のSFCは、何かやりたい。という意欲のある子達ばかりが集まっていますし、NGOや起業などで活動している人も珍しくありません。
そんな環境で、私も負けていられないので頑張らないと、といつも刺激をもらっています。
また、授業では一方通行ではなくて、プレゼンやディベートの機会も多いですし、帰国子女の子も多いので英語でのプレゼンやディベートの機会も多くあります。
E:楽しそうですね!周りに意欲の高い正にグローバルアントレプレナーの人達が多い環境は、とても良い影響があると思います。
T:そうですね。私も今年はビジネスの企画とか、いろいろな福祉的な活動に参加してみたりと、社会にインパクトを残せるような活動を拡げていきたいと思っています。
E:本当に素晴らしいご活動、応援しています。高田さん、今日は本当にありがとうございました!
高田さんへのインタビューを通じて見えてきたものは
ご両親の高田さんのやりたいようにさせるという良い距離感、
ご自身のアイデンティティで葛藤した経験
海外で経験した多様性
周りにアントレプレナーシップを持った人達がいる環境
という4点が高田さんの主体性や起業家精神が育った要素としてあるのではないか、と思いました!
真のダイバーシティとは何か、考えるきっかけにもなりました。
次回もう1名大学生のグローバルアントレプレナーの方をインタビューします。
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